
茨城大学卒業
松本 恵理子(まつもと えりこ)さん <参加期間:3週間>
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◆ プログラム参加までのいきさつ
大学時代、教師になりたいわけでもなかったのに、親の勧めで何となく教職を取った。一般企業への就職か教師の道か悩みながら、あまり確信のないまま地元の公立中学で英語の契約常勤講師を始めた。
最初の1年は教師という仕事自体に馴染めず、「自分はこの仕事を一生続けられるんだろうか」という疑問や不安ばかりの日々。2年目になって生徒の英語がだんだん伸びていくのが見えて、ようやく教えることが楽しいと感じはじめたが、一度、郷里を離れて生活と仕事をしてみたいと一念発起。東京の国分寺に引っ越して、民間の幼児向け英語学習塾で働き始めた。初めての東京での一人暮らしと仕事。それまで人に頼りがちだったが、意外と自分で何でもやれることを発見した。しかし仕事に関してはこれが本当にやりたいことかどうか、疑問符が残るままだった。
自分の好きなことをしてみたらどうだろうか。飛び込んだのはベーカリーショップ。パンを作ってみたいという気持ちで入った職場で得たことは、「パン作りの裏にはこんなに大変な仕事があったのか!?」という驚き。まだ暗い時間からお店に入り、仕込が始まる。一日中ほぼ立ちっぱなしで、重いものを持つ体力も要る。美味しいパンを食卓に届ける喜びはあるものの、身体はクタクタになる毎日だった。
1年経ち、自分の進路に悩みながら「もう一度教師を目指してみよう」と決意した。教員試験に再チャレンジしたが、相変わらずの狭き門で半ばあきらめていたところ、10月に合格の吉報が届いた。「来春からまた教育現場に戻れる!」
ところがすぐに不安がのしかかってきた。英語の教師をするにも関わらず、カナダのホームステイを経験しただけで、一度もアメリカの地を踏んだことがない。ネイティブスピーカーの中で自分の英語を試したこともない。「アメリカに行って何かをしてこなくては・・・。何かを経験してこなくちゃいけない・・・。」今せっかく時間があるのに、観光だけに行くのはもったいない気がした。何かないだろうか・・・?
インターネットで「アメリカ」「留学」で探してみた。正規留学はちょっと出来ないしな・・・。さらに「ホームステイ」「教育」で探すと、1つのサイトが目に飛び込んできた。
"アメリカの幼稚園・小学校でアシスタントティーチャー″
自分の探していたものはこれだ、と直感が走った。英語の勉強をするだけでなく、アメリカの教育現場で先生がやっていることをこの目で見られる。アメリカの子供達の学校生活が見られる。さっそく資料請求し、直接カウンターにも足を運び、プログラムの内容を聞きながら申し込んだ。この時期、向こうは暑いのか寒いのか。教室の中でどんなことをしたらいいんだろう。色々な不安もありながら、あっという間に渡米の時期を迎えた。

◆ 1日のスケジュール
7:00 起床。身支度。
8:00 自転車で学校へ。ホームステイ先は小高い丘の上のお家なので行きはスイスイ20分で。
8:30 授業。ライティング、リーディングの個人ワークが中心。
10:00 リセス(休憩時間)
10:15 授業。リーディングかイベントが中心。
12:15 ランチタイム
13:00 授業。PE(Phisical Education・体育)やコンピュータが中心
15:00 授業終了。ここからは翌日の授業の準備をする先生の手伝い。生徒の作品の展示、イベントの準備など。
16:00~17:00 終了。早く終わると自転車でDel Amoモールなどをウィンドウショッピング。
18:00 食事。いつもホスト家族とお話しながら、だんらんのひととき。そのあとはテレビを一緒に見たり、日本とのメールのやり取りなどをしてくつろぐ。
23:00 就寝
◆ 先生方のアシスタントとしての流れ(3週間)
1週目:先生の授業を見てるだけ。言われたことをし、生徒たちともまだ溶け込めず。先生の授業のコメントはなかなか聞き取れないため、1つずつ単語のメモを取るのに必死。
2週目:先生の授業の進め方がわかってくる。子供たちも慣れてきてくれる。耳が慣れてくるため、メモを取る単語の数が少しずつ減っていった。先生とも受け答え以外に、色々な話ができるようになってきた。
3週目:子供たちの癖や特徴が理解できると、先にフォローに回ってあげることができる。他のクラスを先生に頼んで見せてもらう。ボランティアで来ていたWest Highの学生ボランティアと知り合い、高校を見学させてもらった。ヒアリングが自分でもわかるぐらいよくなっていて、そうすると色々な先生ともコミュニケーションを図るようになっていった。
◆ 小学校は開放的でカラフルな楽しい教室
一言でいうと本当にエキサイティングな3週間でした。
行く前は親からも、そんなに長期間一人きりで行くなんて危ない、と反対されましたが、それでも何とか承認を得て、来させてもらったことに心から感謝しています。
アシスタントティーチャーとして最初に教室に入った瞬間、「違う」って感じました。とにかく明るくてカラフルなんです。教材やワークで子供たちが作る作品は色とりどりで、それが教室の中にきれいにディスプレイされています。全体の空間が広いだけでなく、窓際にはソファがあって、授業中でもリセスの時間でも子供たちはそこでリラックスした様子で本を読んだりしています。机の並び方も先生の方針によって自由に並べているものもあれば、まっすぐ整列している教室も。そんな中で学ぶ子供は明るくて表情が豊か。朝学校で会うと「おはよう」の挨拶とともに抱きついてくれる。今日も取材で早く帰る、って言うと「ミス・エリ、早く帰るの?寂しい。」とハグされました。
私は1年生のクラスに入らせていただきました。担任はミセス・スミナカ、日系人の先生でした。スミナカ先生の教室は、机の配置もあまりきっちり並べず、なるべく自由空間を作っていました。教室の中はいつもワイワイがやがや、とてもにぎやかな雰囲気です。でも別のクラスを見学させてもらったら、いつもシーン、と静まり返っている。先生がびしっと指導しているような雰囲気でした。日本の学校だと、教室に貼る掲示物も大体同じで、机の並び方が部屋によって違うなんて考えられませんよね。一度、学校で何人かの先生に聞いてみたら、「先生ごとにキャラクターがあるんだから、違うやり方でいんじゃない?」って。
アメリカの学校では、1年に1回必ずクラス替えがあるので、毎年先生が変わるたびに方針も変わる。子供は少し戸惑うかもしれませんが、お母さんたちも子供に対して、このクラスはこの先生のルール、別のところでは別のルールに従うんだよ、と教え聞かせているようです。
◆ インディペンデントな人間に
アメリカでは個々人の個性を大切にする、という印象を持っていましたが、スミナカ先生からは個性という言葉よりも、"Independent"という言葉を聞きました。より多くのチョイスを与えて、自分で選んで見つけるよう心がけているそうです。
例えば、午前中の授業ですが、ライティングとリーディングの個人ワークが中心です。授業の進め方は、最初に先生が黒板に「今日のアジェンダ」として5つくらいの課題を出します。
・日記を書く(ライティング)
・色紙で形を作る(クラフト)
・Findを使った言葉を書く(ライティング)
などを挙げて、1時間半の間に、好きな順にやってみる。一旦時間になれば、できたところまでで終了する。早く終わった人はリセス(休憩)してもよい、といったルールを伝えます。だから教室の中は、絵を書いてる子もいれば、文字を書き出している子もいるし、先生にノートをチェックしてもらっていたり、各自がバラバラなことをしてるんです。ぱっとできる子供はさっさと仕上げて、カウチのところで本を読んで休憩しているし、のんびりやってる子もいます。でも、常に何かを自分で選んでやっていくので、子供たちが自立しているという感じがしました。
ただ、少し気になったのは、あまりよく理解できない下のレベルの子に対してはあまりフォローしないこと。上のレベルに合わせて、与えるものを与えるけど、やらない子はそのままで、これが何年も経つとどうなるんだろうと思いました。

◆ 楽しんで学べる授業
イベントと学習をつなげるのが上手なので、みんなが授業を楽しんでいます。
この前は100th Dayでしたが、これは小学校に入って100日目をお祝いしよう、という日で、1日中「100」にちなんだことを取り入れた授業をします。例えば、10枚の紙に10文字ずつ書き込めるマス目を作り、それを10枚ずつ配ります。そのマス目のかたまりが「100」のような形になっていたりします。このマスをすべて埋めることができたら、みんなは100文字の単語を知ったことになります、さあ、書いてみて、と先生が言うと、みんなキャーキャー言いながら、あれこれと知っている単語のスペルを書いていきます。
また他の授業では、「100歳になったら何ができる?」「100も食べられないものは何?」など、クイズのようなものをテーマにして、皆が自分の頭でいろいろ考えていくようなアクティビティをするんです。見事に1つも同じ答えが出てこないくらい、様々な発想が飛び交うんですよ。
◆ 違っていることが当たり前
クラスは20人で、ハワイアン、ヒスパニック系、インド系、中国系、韓国系など、様々な人種のバックグラウンドを持つ子供たちがいましたが、顔や肌の違いによる仲間はずれは一切ありませんでしたね。
日本だと、テストの回答を書いている横で覗き込むと隠す子が多いんですね。「間違ってたら恥ずかしいから見ないで」って言うんです。でもアメリカだと、どれどれ、と横に近寄ると、ハイ、どうぞって感じに、積極的に見せてアピールしてくれる。周りと違う意見でも自信を持って発言するんですよね。また積極的に聞くという両方を備えている気がします。もっと「自分が自分が」と主張するのかと思っていましたがそんなこともなく、それぞれ皆、姿も意見も違っていても臆することなく、自分の意見を恥ずかしがらずに伝えられるんです。
もう1つの印象はお父さんお母さん方が先生を信頼しているところ。こちらではほとんどの親が朝、車で子供を送りに来ますが、そこで先生と親が話している姿をよく見かけます。教育現場と家庭のコミュニケーションがいいから、何か問題が起こっても一緒に解決しやすいと思います。
◆ 日本の教育現場でやってみたいこと

日本人は発音のきれい下手に囚われすぎて、英語が苦手になっている気がします。そして私自身、最もその殻に囚われていたかもしれません。英語が上手い人にはかなわない、ってどこかで引け目を感じていましたが、相手に自分の意見を伝えられることが大事なんだと今は思えます。
アメリカの教育現場は先生ごとに方針も違うし、いい面も悪い面もあると思いますが、絶対お手本にしたいことは、子供達がいきいきと楽しんで学校に来ているということ。これを何とか日本の学校でもやってみたいですね。
◆ アメリカの教育現場を知る絶好の機会
このプログラムに参加して思うのは、本当に学ぶことが多いということです。自立心を持った子供の教育のあり様、保護者との関わり方、先生同士のコミュニティなど、外から見ているだけでは知りえないものを、中に入って体験できるのです。日本で教育関係に何かしら携わろうと考える人にとっては、アメリカの教育現場を実体験できる絶好の機会だと思います。もちろん英語の勉強にも最適。毎日「英語のシャワーを浴びている」気分で、3週目くらいになるとリスニング力もかなり上がってくることが自分でもわかりました。
ホームステイをすることで、そこに暮らしているという感覚で、生活しながら学校の教育実習をしているという感じです。ホスト先と学校がちょっと遠いと大変ですが、カリフォルニアは雨も少なくいつもお天気ですから、いいシェイプアップになりますよ(笑)。
そして私自身、随分考え方が変わったと思います。以前は授業に生徒が付いてこないとピリピリしていましたが、きっとそれは自分のことを拒否されるのが怖かったからなんだと思います。この体験で、子供は一人ひとり違っていて当然なんだとわかりましたので、カッカすることはないでしょうね(笑)。
それと、滞在中、ライトハウスのスタッフの方がいたことがとても大きい安心感になりました。海外で暮らしてみると、ちょっとしたことでもすごく不便でどうしていいかわからないことも多かったのですが、自転車の鍵が開かずに困って電話をしたら、そこにいくので待っていて、とすぐ飛んできてくれたり、アムトラックのチケットの買い方がわからなかったのを相談すると、即座に調べて丁寧に教えてくれたり。日本だと普通にできることが、こちらでは手がかりもつかめないことも多いのですが、こういった相談に乗れる拠点があることで、大きな安心感を感じて過ごすことができました。

◆ アメリカ生活体験での発見や準備したほうがいいことは?
・親切な人が多い。声を掛けて聞いたときにいやな顔ひとつせずに教えてくれる。
・車社会。自転車で行動していたが、車の人も親切によく止まってくれた。
・夫が妻を大事にする。ホストファミリーのパパはママのことを本当に大切にしていた。
・トーランスは安全な街。来る前の不安とは全然違っていた。
・車がないと不便で、公共交通機関はバスが中心なのだが定時に来ない。
・街が広いため、とてもよく歩かないといけない。スニーカーは必携。
・日差しが強く、乾燥しているから喉がかわくのでボトルウォーターは必携。
・クレジットカードをよく使うから必ず準備。
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